ロービジョン外来
眼科の治療も、それぞれの専門があり、一人の医師に治らないといわれても、別の医師に相談すると治るということもあります。医学の進歩はめざましく治療法は日進月歩ですが、今、目の前の患者さんに間にあう治療法は残念ながらないということはしばしばあるのです。
身体障害者の基準に照らして、適切に保障や補助が受けられるよう当院で診断書を作成しますので、居住地の役所で手続きをしてください。どのような保障や補助が受けられるかは自治体によって異なりますので、役所でご相談ください。
ただ、現行の基準では、片眼失明で遠近感が大きく損なわれ、視野も狭くなるのに障害認定されないとか、両眼とも視力不良であっても失明までいかない場合、自動車の運転免許が取れないにもかかわらず障害者認定されないなど、不都合があります。公共交通機関の整備されていない地域では運転できるかどうかで職業選択もかなりかわってくるでしょう。
充分見えなくて誰かの世話にならなければ生きていけないのなら、生きている意味がないと考える方もあります。
それまで目が見えているのが当たり前の生活をしていた人にとって、見えないということは確かに苦しみです。けれども、残っている視力と視野を最大限に生かして、出来るだけ生活を便利にする方法はあります。これを専門におこなっているのがロービジョン外来です。当院では経験豊富な視能訓練士と医師が協力してこれに当たっています。
文字を拡大したり、白黒を反転させることでかなり見やすくなります。また、今日ではスマホ、パソコン、などをうまく使うと見えにくいものを見えやすくしたり、音声で読み上げてくれたりと助けになります。また、タイポグラフィという枠を使うと、書類の指定された枠にうまくサインすることができます。
見えにくい人が安全に歩くための歩き方の注意もあります。
見ることによって何をしようとしているか、その目的と残された視力視野をうまく生かす方法を結びつけることができると、やりたいことを達成できます。
視力も視野も一切残っていないとなったらどうでしょうか。それでも工夫によって生活をしやすくすることができます。
身の回りには、いつも使うものを決めたところに決めた方法で置いておくことで、見えなくても手に取ることができます。不用意にものを置かないことを決めておけば、つまづいて転倒することを避けられます。
家の中は自分でできても外出はどうでしょうか。視覚障害者は情報入手と移動が非常に困難になります。
眼が不自由になったとたんに歩行をあきらめる人もいます。家族も心配して外に出さないこともあります。しかし、家の中でばかりすごすと、心身ともによい状態でいられなくなるのは、健常者も視覚障害者も同じです。
眼からの情報にたよって歩いていた人が、眼以外の情報によって歩くには、その方法を習うことにより早く身に着けることができます。
方法さえ身につければお化粧だってできます。
失ったものを嘆くより、今残されている命を喜び、最大限に生かすことで幸せに生きることができます。失明しても決して暗黒の世界になるわけではありません。